「海藻食のすゝめ」その1)

コラム

「海藻食のすゝめ」その1)”海の野菜”である海藻の食品成分上の特色とは?

“海の野菜”である海藻の話題に入る前に、“陸の野菜”いわゆる野菜について簡単に触れておきます。野菜が体に良い理由は、第1にビタミン類が豊富、第2にカリウムなどのミネラルが豊富、第3にファイトケミカルに富むことです。ファイトケミカルとは、植物が紫外線などによって発生する活性酸素から身を守るために備える、抗酸化能力のある物質のことで、カロテンなどが代表的なものです。そして4点目の理由は食物繊維が多いことです。

 ”陸の野菜”に比べて”海の野菜”の海藻の栄養成分上の特徴は何だと思いますか?表1を見てください。これは文部科学省発行の「日本食品標準成分表2015年版」から抜粋したものです。 

この表には音声リンクが付いています。注意:クリックすると音が出ます。

この表でワカメのヨウ素の欄にアステリスク(※印)がありますが、通常、調理に使うカットワカメでは8,500 μgあります。

 さあ、両者の違いがわかりますか? そうです。海藻の特徴は、

1点目がカルシウムからヨウ素に至る各種ミネラルが野菜よりもはるかに多いことです。2点目は“陸の野菜”、特に黄緑色野菜と同様にβカロテンなどのカロテノイドが多いことです。3点目は食物繊維が多いことです。4点目はタンパク質の含有量は穀類並である、ということです。この表には出していませんが、タンパク質の栄養価を判定する必須アミノ酸の含有量(アミノ酸スコアと言いますが)も高いことで、海藻のタンパク質の栄養価は極めて優秀なのです。さらに海藻の脂質についても触れておきます。海藻の成分の特徴の5点目としてω-3系の多価不飽和脂肪酸(多価とは炭素の二重結合が二つ以上ある、という意味ですが)、例えばEPAエイコサペンタ塩酸などを多く含んでいることです。少ないながら、ω–6系の多価不飽和脂肪酸、例えばアラキドン酸も持っているということです。

 いかがでしょうか? “海の野菜”の海藻も日常の食事に取り入れたらいかがでしょうか。次回は、海藻類がもつ独特な化合物についてお話しします。

広海十朗(日本大学生物資源科学部 特任教授) 

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